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新年度になりました

2022年04月19日

 長かった冬も終わり、ようやく温かい日差しが毎日届くようになりました。この冬は例年になく積雪が多く、1、2月の現場では雪崩で帰れなくなったとか、吹雪で現場に行けないといったトラブルがありました。

 先日、岩手と福島に出かける機会がありました。岩手は桜、コブシが満開、福島では桜は散ったものの桃がちょうど見ごろになっていました。

          岩手で咲いていたコブシの花

             福島市の桃畑、きれいです。

 暖かく仕事がしやすい時期になってきたら、仕事が切れてしまいました。会計年度が変わり、新年度の業務が始まるまでの端境期であり、例年のことではあります。とはいえ、年度末の工期までに終わらせようと豪雪の中で頑張っていたのに、暖かくなると仕事がなくなるというのは「なんだかなぁ・・」と思ってしまいます。

 国交省などの発注者も「発注の平準化」により工期の集中を避けることを目指す、としていますが、実際にはなかなか進んでいません。もっと働く人の気持ちを汲んで本格的に進めてほしいところです。

 2年前から続いている新型コロナウィルス感染症の流行も、ワクチン接種が進み昨年末にはだいぶ落ち着いてきたようでしたが、新たにオミクロン株が現れてから第六波の流行がなかなか沈静化しません。私たちは外仕事メインなので、比較的影響が少ないと思いますが、飲食業や観光業など影響の大きい仕事の方は本当に大変です。

 今年はさらにロシアのウクライナ侵攻という大事件が起こりました。1989年のベルリンの壁崩壊から1991年ソ連崩壊までの一連の出来事によって冷戦が終わり、もはや正規の国どうしの戦争が起きることはないだろうと思っていましたが、とんでもないことが起きたものです。長引けば日本経済への大きな影響も必至です。一日も早くこの悲劇が終わることを願うばかりです。


「地学を国民教養に!」

2022年03月23日

 これまでこのブログの中で、地形を知ることが防災の基礎になる、ということを何度か書いてきました。しかし私ごときが言ってもあまり説得力がないなあ、と感じてもいます。そこで今回は、その道の権威の方の文章を引用して、応援してもらおうと考えました。

 以下に掲載するのは、鹿児島大学名誉教授・岩松暉(あきら)先生が、2018年10月13日に、東京地学協会秋季講演会(熊本大学百周年記念館で開催)で行った特別講演「地学を国民教養に!」からの抜粋です。

 岩松先生は、鹿児島大学理学部で応用地質学、特に防災のための地質学の考え方を教えられてきました。また、日本のジオパークの生みの親でもあり、広く地学教育の必要性を訴えてきた方でもあります。学術論文だけなく、ユーモアのあるエッセイも数多く書かれていて、専門外の方でも親しみやすく読めると思います。何か「他人のふんどしで相撲を取る」ようで気が引けるのですが、ぜひご一読ください。

 なお、本文はhttp://www.geog.or.jp/files/autumn_h30_01a.pdf からご覧になれます。また岩松先生のホームページはhttp://fung.html.xdomain.jp/index.htmlです。

 今年7月の豪雨(平成30年西日本豪雨)では、西日本で甚大な被害が出ました。一番問題になったのは避難指示に従わず、犠牲になった方が多かったということでした。真備町では9割が自宅で亡くなっていたそうです。川が合流するところでは氾濫が起きやすいのは地学の常識で、真備町のハザードマップにもチャンと描かれています。しかも1976年の台風17号で水害があったのです。広島県では犠牲者の7割が土砂災害警戒区域内で亡くなっています。自分の住んでいる地域の地質地形的な特徴を知っておいていただきたいものです。(中略)

 豊後街道や律令時代の古代官道は、今回の地震(平成28年熊本地震)で被害を受けなかったそうです。熊本地震で土砂崩壊が多かったところは、立野の峡谷部と外輪山のカルデラ壁です。これら地学的に危険な場所を見事に避けているのです。また、カルデラ内では、湿地帯を避けて高燥な自然堤防や扇状地の微高地を利用しています。やはり昔の人はどこが危ないか知っていたのでしょう。防災対策も、現在のような力づくで抑え込む自然征服的やり方ではなく、自然の仕組みをうまく利用して軽くいなす方式でした。石塘(いしども)など加藤清正の治水工法はその典型です。(中略)

 以上、最近の自然災害の例を挙げましたが、災害に対処するには、孫子の兵法が参考になります。例の「彼を知り己を知れば百戦危うからず」です。今まで防災というと、斜面崩壊のメカニズムとか、地震とプレートテクトニクスとか、災害現象そのもの、いわゆるハザードの知識の啓発が主でした。災害予知も東海地震説以来、何時起きるのかという時間的予知ばかりが注目され、どこが危ないか、といった空間的予知が軽視されてきました。結果的に、災害は気象庁がやるもの、救助は消防と自衛隊と、御上任せの風潮を生んでしまいました。しかし、熊本市の人口74万人に対し、消防職員は810人です。火事にはこれで良いでしょうが、地震のような同時多発災害にはお手上げです。市民一人ひとりが、自分の住む地域の自然の成り立ちと自然の仕組みを理解して、自らどう対処するか日頃から考えておくことが大切です。地学の知識を身につけておかなければならないのです。


地震と活断層について(7)活断層による地形例

2022年02月14日

 このシリーズの最後になりますが、活断層をどう地形から読み解くのかについて述べます。マニアックな話題で恐縮なのですが、私(代表熊谷です)は、地図好きが高じて地形判読をやるようになってしまい、この話題は避けて通れません(すみません)。ここでは地形から活断層を読み取る例を二つ取り上げます。

 最初に紹介するのは、岐阜県中津川市坂下町にある阿寺断層の地形です。ここは地震・活断層研究では大変に有名な場所で、断層による変位地形の典型例として取り上げられます。

            岐阜県中津川市坂下町の地形図

 坂下駅周辺には木曽川の河岸段丘が発達し、4つの段丘面があります。坂下駅を出発した中央本線は、駅からおよそ300mで比高10mほどの崖にぶつかり、そのままトンネルに入ります。この崖は北西-南東方向に連続し、坂下の町を横断し、さらに木曽川を越えて対岸に続いています。

 木曽川に最も近い低位段丘面ではこの崖の高さは2~3mですが、下から2段目の坂下面では10m程度になり、この面の下をトンネルが通っています。3段目、4段目と比高は高くなり、最も高い(最も古い)松源地面では16.5mの高さになります。それぞれの段丘面、段丘崖、断層崖が交差し、坂下の町は坂だらけです。坂下という地名もうなずけます。

 地形図では市街化によってわかりづらいので、同じ場所の陰影起伏図と段丘区分図を下に掲載します。区分図に整理された地形を見ると、同じ段丘面が断層線をはさんで北東側が隆起し、また左横ずれを起こしていることが見て取れます。また、高い段丘面(古い面)ほどその差が大きく、古い時代から活動が継続し、食い違いの変位が累積していることがわかります。

            上の地形図の陰影起伏図

            坂下駅周辺の段丘区分と阿寺断層

 次の図は宮城県白石市越河地区の地形図です。ここは東北自動車道で国見ICから下ってくると左側に田んぼが広がる小さな盆地としてよく見えます。さらに下ると再び山に入り、やがて白石盆地に出ます。

             宮城県白石市越河地区の地形図

 地形図で見ると、白石市西部の鉢森山から雨塚山に続く西側の山地は標高550m程度の定高性をもっており、その東側は急斜面となっています。また、東北本線や国道4号線が走る山麓はややカーブしながらも直線状です。一方南東側の山地は開析が進んだ丘陵状で、山麓線は入り組んでおり、小さな島状の孤立丘があり、堆積盆地であることは明らかです。この東西の山地の形成過程が異なっていることは明瞭です。

 この西側山地と越河盆地の境には福島盆地西縁断層に続く越河断層があります。西側の山地は越河断層の動きによって隆起した山地であり、盆地内を流れる斎川はこの隆起によって断ち切られ、かつては湖になっていたと考えられます。そこに両側の山からの土砂が堆積し盆地が形成されました。東側山地は隆起しなかったため、盆地の形成によって埋積され、出入りの多い山麓線になったものです。

 このように断層の変位によって形成された盆地を断層角盆地と呼びます。越河盆地は、逆断層で作られた断層角盆地のひとつの典型例といえるでしょう。

 地形を知ることは防災・減災のための基礎です。それは地震に限らず、河川災害、土砂災害においても同じです。以前も同じことを書きましたが、ハザードマップを理解し、どこにどのような災害の危険性があるのかを深く知るためには地形の理解が欠かせません。

 蛇足になりますが、地図を読むのは、本当に面白いことです。「この地形図上のどこに活断層があるか探せ」というような問題は、少々ルールが特殊なゲームのようなものです。地図、地形図の楽しみを知ってもらえればうれしいです。(変なやつ、とも言われますが・・)


地震と活断層について(6)断層と地質調査

2022年01月20日

 断層に関連する地質調査は、大きく二つに分けられます。

①土木工事に関連して断層を調査する場合。

②活断層そのものを調査する場合。

 活動していない古い断層であっても、土木工事においては警戒しなければならない危険な要素になることが多いです。例えばダムを作る場合、断層の角度、傾斜によっては、ダム自身の巨大な荷重によって滑動する危険があります。また盛土、切土を伴う道路工事などでも、荷重の変化によって断層面に沿って崩壊する危険があります。

 断層面は一般的に粘土化しているので、水を通さない不透水層になります。そのため断層の両側で地下水位が違うことがよくあります。トンネル工事で断層を突破したときに、突発湧水が起きるのは、水位が高い方から低い方へ水が移動するからです。映画「黒部の太陽」で、大湧水の場面があるのはこのためです。

 このように古い断層は、活断層のように変位を起こすわけではありませんが、土木工事において大変危険な要素であり、地質調査でも十分注意しなければなりません。

 次に活断層そのものを調査する場合についてです。

 阪神大震災後、政府地震調査研究本部が作られ、日本全国で活断層調査が行われました。これはそれぞれの活断層の位置、長さ、活動履歴、活動頻度、変位量を調べ今後の活動予測、危険性を評価しようというものでした。その結果は各断層、断層帯ごとにまとめられ公表されています。

 活断層調査の流れは概ね以下のようになります。

①地形図と空中写真判読

 いつも出てくる予備調査の項目ですが、断層調査では特に重要な意味を持ちます。まず地形図から直線状の河谷とそれをつなぐ峠や鞍部などに注目します。これはリニアメントと呼ばれる地形構造です。この直線構造の中、あるいはその付近に活断層による地形の変位を示す地形があると、活断層の可能性が高いと判断されます。そして、空中写真の立体視で変位を確認します。これを変動地形学的手法と呼びます。

 変動を示す地形には、三角末端面、低断層崖、並行する河川の同じ方向への屈曲(オフセット)、地溝と断層盆地の形成、風隙など様々なものがあります。熟練した地形判読技術者はこうした地形から活断層による変位の程度、歴史を読み取ることができます。

 この活断層の地形判読については次回に述べます。

②地表踏査

 地表踏査では、露頭を観察して、岩石の種類、風化の程度、地層の走行・傾斜を調べていきます。通常の地表踏査は、これらの連続性に注目しますが、活断層調査では不連続性に注目すると言っていいでしょう。①であげた地形の変位と考えられる場所を、現地で確認していく作業となります。

③ボーリングおよびトレンチ掘削

 ボーリング調査は、採取したボーリングコアによって断層面、破砕帯を直接目で見て確認できる方法ですが、あくまで点で捕まえるため、断層の位置、走行・傾斜をある程度正確につかんでおかないと空振りに終わる場合があります。そこで行われるのが群列ボーリングという手法です。想定される断層線を横断して、数本のボーリングを行い、地層のずれを探し、ずれの大きい付近に断層があると想定します。これは比較的新しいほぼ水平な堆積層がある場合には大変有効です。

 断層本体をボーリングコアで確認するためには、斜めボーリングを一般的に用います。断層が傾斜しているので、それに直交するように掘削すると、断層面にぶつかる可能性が高いからです。

 こうして断層の位置を確定し、最後にトレンチを掘削して人の目で断層の状態を確認します。下の写真を見るとわかるとおり、トレンチの断面では堆積層の変位の様子がはっきりとわかります。

 地層中にある炭化物の放射性年代測定(一般的にはC14法をもちいます)をすると、各地層が堆積した年代がわかります。そこから変位を起こした年代、頻度等を推定します。

           産業総合研究所によるトレンチ調査

④地震波探査

 ①~③の調査方法では地表付近の情報しか得られず、地下深部まで続く活断層の位置はわかりません。そこで用いられるのが反射法地震探査です。これは地震波が地下の地層境界で反射して戻ってくることを利用して地下深部の構造を調べる方法です。

 地震波は海上では曳航するエアガンにより、地上ではバイブロサイス車と呼ばれる起震装置で発生させます。この方法は地下数千メートルまでの地層の変位を調べることが可能です。

         反射法地震探査による長町利府断層の想定断面図(地震研究推進本部より)

 こうした様々な調査方法による結果を総合して、活断層の評価を行います。これは産業総合研究所や大学などの各研究機関による学術的研究調査だけでなく、電力各社による産業目的の調査(最も多いのが、原子力発電所周辺の活断層調査でしょう)も、調査の手法は全く変わりありません。

 

 政府地震研究推進本部のホームページには、各断層・断層帯の評価が掲載されています。例えば宮城県にある長町―利府断層帯について次のように記載されています。

1.位置・形状:長さ21km~40km 一般走行N40°E

  ずれの方向と種類:北西側隆起の逆断層

2.過去の活動

 ・平均的なずれの速度:0.5~0.7m/千年(上下成分) (いわゆるB級断層)

 ・過去の活動時期:最新活動―約1万6千年より前 一つ前の活動―不明

 ・1回のずれ:2m程度以上

 ・平均的活動間隔:3千年程度以上

 ・断層帯全体が活動した場合、M7.0~7.5程度の地震が発生する可能性がある。

 概略ですがこうした内容が記載されています。この評価は、ここまで述べてきた様々な手法による調査の結果を総合して得られたものです。


令和4年 明けましておめでとうございます

2022年01月08日

 明けましておめでとうございます。令和になって3度目の新年を迎えました。昨年のクリスマス以降、断続的にやってくる寒波で本当に寒い年末年始となりました。

 この3年、毎年同じようなことを書いていますが、年明け早々新型コロナの流行が第六波を迎えたと言われています。オミクロン株の感染力が強いせいなのでしょうか、年明けからあっという間に感染者が激増しています。新型コロナ禍が始まって以来、幸いなことに社員、協力会社に感染者は出ていませんが、軽症とはいえ家族の中で感染した人がいました。

 昨年末にはだいぶ感染者数が少なくなり、宮城県内の感染者数はゼロの日続き、年末には安全会議、年頭には二柱神社の神職を迎えての安全祈願祭を再開したばかりでした。また、みんなが集まっての行事は難しくなるかもしれません。

 こうした行事は難しくなっても、何よりも無事故無災害で今年一年仕事を続けていけられるように、社員、協力会社一同頑張っていきたいと思っています。

               事務所での安全祈願祭