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台風19号が残したもの

2019年11月11日

10月12日から13日にかけて東日本を縦断した台風19号は、ご存じのとおり大変大きな被害をもたらしました。10月28日時点の総務省消防庁の発表によると、死者行方不明者100名、住宅被害は全半壊4,008棟、床上浸水3万4,002棟、床下浸水3万6,565棟、同じく10月28日の国土交通省発表によると、7県20水系71河川、計140箇所で堤防が決壊、17都県で決壊、越水による浸水被害が発生したと報告されています。
 昨年7月の西日本豪雨に比べ、死者行方不明者こそ少なかったものの、令和になって初めての大型水害は、過去数十年間で最も広い範囲に被害をもたらしました。前回のブログ「忘れることについて」で、治水の重要性を忘れないことが必要と書きましたが、忘れるどころか、強烈な記憶を残すものになってしまいました。お亡くなりになった皆様のご冥福をお祈りいたします。

             浸水した丸森町中心部(写真:国土交通省)


 宮城県内でも、丸森町、大郷町の被害が大きく報じられ、現在堤防等の仮復旧が行われています。また、これからの復旧方針を決める災害査定のための調査も始まり、当社も対応を求められています。通常業務も繁忙期に入っており、どこまでできるかわかりませんが、できるだけの対応をしなければと思っています。
 被害が広く大きく、その種類、要因もさまざまであり、これから個々の被害が分析され、国土交通省を中心にそれぞれへの対応策が検討、決定されていくことと思います。
 個々の被害は別にして、これだけ多数の堤防が決壊したこと、特に千曲川(信濃川)、阿武隈川という日本を代表する大河川が破堤したとことは大きな衝撃です。被害の広さという点では、終戦直後のカスリーン台風以来ではないかと感じます。その背景には多くの方が指摘しているとおり、地球温暖化による海水温の上昇があることは間違いないでしょう。台風19号はスーパー台風と言われましたが、これからはこれが特別なものではなく、繰り返しやって来るものと見なければなりません。
 表題で「台風19号が残したもの」と書きましたが、それは大きな被害だけでなく、これからのわが国の国土のあり方、防災のあり方を、温暖化という変化に対応しどう変えていくのかという宿題ではないかと思います。
 防災対策として、堤防やダム等のハード面の対策だけでなく、ソフト対策の重要性が強調されていますが、その基礎となるのは各自治体で作成したハザードマップです。ところで、40代より若い人たちに話を聞くと、高校で「地学」を勉強しなかったという人がほとんどです。高校の先生に話を聞く機会もありますが、「地学」の授業はあまりやられていないようです。自分が住んでいるところがどういう場所なのか、段丘なのか扇状地なのか、あるいは蛇行原なのか、またそれらの地形種はどのような地形営力でできたものなのか、といったハザードマップを理解するための基礎が学ばれていないのです。
 宮城県内には多賀城高校に災害科学科があり、特色ある教育がなされていますが、ここまでとは言わないまでも、地学教育により自然災害の基礎を理解しておくことは防災のために大変重要なことではないかと思います。教育行政の方にもぜひ検討していただきたいところです