最上川の流路を上流から見ていきましょう。

最上川の原流は、松川の最上流部、天元台の東側、西吾妻山の火焔の滝とされていますが、これについては異説がいろいろあり、ここが最上流と言えるところは確定できません。米沢盆地で多くの支流が合流し、かつては長井市で白川が合流してから最上川と呼ばれていましたが、現在は米沢市街を流れる松川が最上川とされています。このため松川の源流が最上川の源流としたと考えられます。
しかし源流部までの長さでは、吾妻山系西大嶺の北斜面から始まる鬼面川(おものがわ)の支流大樽川、あるいは飯豊山系三国岳を源流とする白川の方が長い、とする説もあります。
いずれにしても、吾妻山系、飯豊山系の広い地域の沢の水が合流して最上川になっています。
松川、鬼面川、羽黒川など多くの川が扇状地をつくり米沢盆地で合流します。そして河井山の狭窄部を抜けて白川と合流し、長井盆地に入ります。
ところでこの河井山狭窄部は本当に不思議な地形をしています。地形図を下にあげますが、狭窄部(谷)の南(左岸)にある小さな山が河井山、北(右岸)のやや大きな山が愛宕山です。どちらも花崗岩でできた山で連続した岩体と思われます。河井山の南にも低い丘陵がありますが、ほぼ平坦地と言っていい場所です。なぜ最上川はわざわざ国道287号線やJR米坂線が走っている平坦地を避けて、硬い花崗岩の山を穿って流れたのでしょうか。謎です。これは面白い話題なのですが、突っ込むと大変長くなるので、次に進みましょう。

河井山狭窄部の地形図
長井盆地では西側の朝日山地から野川や草岡川、実渕川などの中小河川が扇状地、沖積錐を作って流れ込みます。これらの川が運ぶ堆積物に押され、最上川は東側によって流れています。
長井盆地北端の白鷹町荒砥から大江町左沢(あてらざわ)まで、荒砥狭窄部と呼ばれる(五十川渓谷とも呼ばれます)約30kmの渓谷に入ります。最上川本流にある唯一のダムである上郷ダムまでは、国道287号線と並行しますが、ほとんど平地らしい平地のない狭い渓谷です。上郷ダムから左沢(あてらざわ-難読地名です)までは、やや広い河谷で、比高30m~40mの段丘を掘り込んだ流路を流れていきます。ここには何段かの段丘があり、朝日町の集落はほぼ一番高い段丘面に集まっています。
左沢の大屈曲を東に曲がると山形盆地です。山形盆地は山形市、寒河江市、天童市、村山市などがある山形県の行政、経済の中心地であり、一連の盆地の中でも最大のものです。山形盆地もまた、西側の朝日山系からの寒河江川、東側蔵王山系からの馬見ヶ崎川、立谷川、村山野川などが扇状地をつくって流れ込みます。この扇状地を利用して、サクランボ、リンゴなどの果樹がつくられ、果樹王国山形を支えています。
山形盆地と尾花沢盆地の境にあるのが大淀の大屈曲です。地形図を見るとわかるとおり、ここで最上川はヘアピンカーブを描いて180度曲がっています。この大屈曲とその先の狭窄部により、上流部は度重なる氾濫被害を受けています。大淀の上流の大久保地区には遊水地が建設され(下写真参照)、現在は大淀の屈曲部をショートカットするトンネルによる放水路が計画されています。

大淀の屈曲部

令和2年7月洪水時の大久保遊水地
ここから最上川は大蔵村本合海まで段丘面を掘削しながら大きく蛇行しています。段丘面を含めた河谷は比較的広いのですが、比高20~30mの段丘外の下を流れる河道は狭く、低い渓谷のようです。
大蔵村本合海(松尾芭蕉が舟下りで乗船した場所)付近で、最上町から来る小国川、肘折からの銅山川、北の丁山地から来る鮭川が合流し、最後の狭窄部である最上峡に入ります。入口の古口から出口の清川まで、約12kmの最上峡は出羽山地中軸部を横断します。比高300mの急崖が続き、雄大な景観を見ることができる最上川観光のハイライトです。

最上峡(戸沢村ホームページから)
国道47号線とJR陸羽西線(2024年7月豪雨の土砂崩れで運行中止中です)が走る左岸(南側)は多少の平地はありますが、右岸(北側)には、全く道路も民家もありません。観光名所である白糸の滝だけでなく、融雪期や雨の後には比高100mあまりの滝があちこちに現れます。戸沢村古口から草薙までの間は最上川舟下りが行われます。
最上峡を抜けると清川で月山から流れて来る立谷沢川と合流し、一気に視界が開け、庄内平野に出ます。ここから最上川河口までおよそ30km、羽黒山から来る藤島川や京田川といった小河川以外合流する川はありません。かつては月山・朝日山系から流下する赤川が酒田で合流していましたが、合流点付近で頻発する洪水を防ぐため、昭和2年に砂丘を切りひらいて日本海に直接放流する新川を開削し、独立した河川になりました。
庄内平野は最上川を境として、南側が田川地方、北側を塩飽地方と呼びます。かつては川南、川北と呼ばれ、文化、風習の違いもあったそうです。塩飽地方(現在の行政区で言うと酒田市北部と遊佐町)は出羽山地からの新井田川、荒瀬川(日向川の支流)、鳥海山からの日向川、月光川の流域です。庄内地方を特徴づける風景は広大な田園と、月山、鳥海山です。川南地方は月山が、川北地方は鳥海山が身近に感じられるかもしれません。

庄内平野から見た月山(庄内町ホームページから)