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温暖化について(4)自律的な地球

2020年06月02日

 地球の環境を決定しているのは主に次の3つの条件と考えられます。


① 地球外からの影響:太陽活動の影響、隕石の落下や、太陽系近傍での超新星爆発などの太陽系外も含めた天体の影響
② 地球上の生物活動:バクテリアから人間まで
③ 地球内部の放射性物質の崩壊熱とその放出


 隕石などの落下は、中生代から新生代の境に起きた事件として有名ですね。約6,500万年前小天体が地球に衝突し、恐竜などの当時の生物の大量絶滅をもたらし、哺乳類の発達を促したといわれています。
 生物活動も大きな影響を与えています。特に酸素を排出したバクテリアの活動は、大気中の二酸化炭素の減少と寒冷化をもたらしただけでなく、酸素呼吸をする生物(現在の大型生物のほとんど)を生み出しました。また、そもそも酸素がなければオゾン(O3)層ができず、生命は太陽の強烈な紫外線から身を守ることができずに、海中から外に出ることができなかったはずです。
 この中で最も決定的なのが、地球内部の放射性物質の崩壊熱の影響です。地球の歴史をひとことで言い表すと「冷却過程」ということができます。地球は約46億年前に多くの微惑星が衝突して出来たと考えられています。できたばかりの地球は衝突エネルギーが熱となり、どろどろに溶けていたのですが、徐々に冷え、約40億年前からは現在に近い、核、マントル、地殻でできた固体状態になったと考えられています。
 その後、地球は火山活動や地殻の動きを現在まで続けていますが、その活動のエネルギー源こそが放射性物質の崩壊熱です。よく知られているように、ウランが崩壊するとラジウムやラドンに変化しながら熱を発生し、最終的には放射能を失って鉛に変化します。カリウム40、トリウム232、ウラン235、ウラン238などの放射性元素が岩石に存在します。岩石に含まれる放射性元素は微量ですが、地球全体でみると膨大なものになります。
 この地球内部の熱を外に排出するために、マントル対流が起こり、プレートも移動します。プレートの運動も火山活動も地震も、すべてこの地球内部の熱を地球外に放出する「冷却過程」で起こる現象なのです。最終的にはすべての放射性元素は放射能を出し尽くして安定元素になり、地球内部の熱が失われ、対流のない冷たい天体になるはずですが、それまでにはまだ膨大な時間がかかります。


 

 地球の環境を作っている最も大きな原動力はこの熱源であり、地球は自律的に動いているといえます。数百万年から数千万年という超長期的スパンでいえば、人類の活動など地球にとっては微々たるものにすぎません。増えた二酸化炭素は炭酸塩として地殻に収集され、海にあふれたプラスチックも堆積物に紛れ込んだごみ(堆積物)として処理されます。(だから何も対策をとる必要がないということではありません)
 「地球にやさしい」というコピーがあり、自分たちが行っている環境活動が地球を守っていると思っている人たちがいますが、それは誤解にすぎません。地球は人間のことなど気にせずに自律的に動いています。環境活動は地球を守るためではなく、自分たち人間を守るためのものに他ならないことを自覚することは重要なことだと思います。
 地球温暖化の問題は、私たち人間が成長する過程で生んだ歪を突き付けた大きな課題です。どうすれば人類の生存と発展を持続させることができるのかという課題です。これは温室効果ガスによる温暖化の問題だけにとどまらないのです。