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火山についていろいろ(3)ホットスポットとプルームテクトニクス仮説

2022年12月19日

 ハワイ―天皇海山列は、現在のハワイ島の位置で中生代末期から火山活動が続き、プレートの運動によって、古い火山島跡が移動し、海山列になったと考えられています。この海山列はプレートの移動の証拠の一つになっています。また、海山列の屈曲は、約4,000万年前にプレートの移動方向が変化したためと説明されています。

              ハワイ島と海山列の発生の仕組み

 このようにプレート(リソスフェア)より下にマグマの生成源があり、非常に長期にわたって同じ場所でマグマが供給される場所をホットスポットと呼びます。太平洋にはハワイ以外にもタヒチ、ガラパゴス、イースター諸島に、インド洋のレユニオン島などの同様の海山列が見られます。これらの火山は、マントル起源のマグマを噴出しているため、いずれもハワイのキラウェア火山で見られるような、玄武岩質で粘性の低い流れるような溶岩が特徴です。

 プレートテクトニクスは、地球表面のプレートの運動をマントルの対流によるものと説明していますが、そのマントル内部の動きを具体的には説明していません。このマントルの対流を、地震波の解析によって明らかにしようというものがプルームテクトニクス仮説です。このプルームテクトニクス仮説は、マントルの対流を次のように説明しています。

 海溝から地球内部に沈み込んでいった冷たく重い海洋プレートは、上部マントルと下部マントルの境にあたる地下約670kmのところで滞留します。これをコールドプルームと呼びます。この滞留したコールドプルームが成長し、何らかのきっかけで下部マントルに落下すると、その反動でマントル深部からの熱い上昇流(スーパープルーム)が発生し、地球規模での対流が起きます。このスーパープルームは常時起きているわけではなく、数千万年から数億年に一度発生し、その大きな対流の残滓が現在のホットスポットとして活動を続けていると考えられます。

            プルームテクトニクスの概念図

 過去の地球では現在では考えられないほど大きく、長い火山活動がありました。それが洪水玄武岩の噴出で、Large Igneous Provience(大規模火成区)と呼ばれています。地上では大陸洪水玄武岩、海洋底で噴出したものが巨大海台です。大陸洪水玄武岩はシベリアにあるシベリアトラップ、インドのデカン高原、アメリカのコロンビア高原が有名です。巨大海台は、太平洋のシャッキー海台、オントンジャワ海台、マニヒキ海台、インド洋のケルゲレン海台がよく知られています。

 シベリアトラップは約2億5千万年前に、200万年にわたって続いた火山活動で、面積は200万km2で西ヨーロッパの面積に匹敵すると言われます。また、この火山活動による地球環境の大変化により、古生代から中生代の境界での大規模絶滅(PT境界事件)が起こったとという説があります。海洋で最も大きなオントンジャワ海台は、面積150万km2、体積500万km3と言われますが、あまりに大きくてピンときません。

 こうした巨大火成区は、実は昔々に大陸が分裂するとき、例えばパンゲア大陸が六つの大陸に分かれるときに発生したと考えられています。というよりも、巨大なホットプルームが上昇し、洪水玄武岩が噴出することで大陸が分かれた、という方が正確でしょう。現在のアフリカ地溝帯も、ここにホットプルームが上昇し、今まさに大陸が分かれようとしている地点です。

 このようにスーパープルームに由来する巨大火成区=洪水玄武岩の噴出とホットスポット火山の活動は結び付いているようです。このストーリーは概ね次のようにまとめられます。

・スーパープルームによって大量の洪水玄武岩が噴出するが、大規模な活動は数百万年で終了する。

・その後も規模の小さい噴火が長期間にわたって続く。

・活動の位置は地球内部から見ると同じ場所だが、プレートの動きにつれて地球表面では少しずつ移動し、ホットスポット火山列を作る。

・ホットスポットの活動は続き、火山列の先端には活火山が存在する。

 このストーリーの例がデカン高原からレユニオン島まで続く海山-海台列です。

     デカン高原からレユニオン島までのホットスポットの移動

 プルームテクトニクス仮説は、ホットスポット火山の驚くべき歴史を説明したのです。

(※まだ仮説です。)